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土建現場から考える国保制度の問題点と改善策

# タイトル: 土建現場から考える国保制度の問題点と改善策

建設現場で働く方々の健康と生活を支える国民健康保険（国保）制度。日々重労働に従事する土木建設業界の作業員にとって、適切な医療保険の存在は欠かせません。しかし、現在の国保制度には建設業界の特性に合わない部分も多く、改善の余地があります。今回は、建設現場の実態から見える国保制度の問題点と、その改善策について考えてみます。

## 建設業界と国保の現状

建設業界で働く方々の多くは、個人事業主や小規模な下請け業者として働いています。大手ゼネコンに直接雇用されている正社員ならば社会保険に加入していますが、日雇いや短期契約の作業員は国保に頼らざるを得ないケースが多いのが実情です。

国土交通省の調査によると、建設業界の国保加入率は他業種に比べて高く、特に小規模事業者ほどその傾向が強まります。しかし、この状況が建設作業員にとって最適とは言い難い実態があります。

## 土建現場から見える国保制度の問題点

1. 収入の不安定さと保険料負担

建設業は季節や景気の影響を受けやすく、収入が安定しないという特徴があります。特に雨天時や冬季は仕事が減少する地域も多いですが、国保の保険料は前年の所得をベースに算出されるため、収入が減少した時期でも高い保険料を支払わなければならないケースが発生します。

2. 労災との関係性の複雑さ

建設現場では労災事故のリスクが高いですが、個人事業主の場合、労災保険と国保の適用範囲が曖昧になりがちです。本来業務中の怪我は労災でカバーされるべきですが、小規模事業者では労災保険への加入率が低く、結果的に国保で医療費を賄うケースも少なくありません。これは国保財政にも負担をかける要因となっています。

3. 健康診断の受診率の低さ

不規則な勤務形態や現場の移動が多い建設業では、定期的な健康診断を受けにくい環境にあります。国保では特定健診が無料で受けられますが、建設業界の受診率は全国平均を下回っており、早期発見・早期治療の機会を逃しています。

## 改善策の提案

1. 収入変動に対応した保険料設定

建設業のような収入変動が大きい業種に対しては、半年単位での所得見直しや、平均所得を基にした保険料算定など、より柔軟な制度設計が求められます。また、閑散期には保険料の減額措置を講じるなど、季節変動を考慮した仕組みも検討する価値があります。

2. 国保と労災の連携強化

建設業に特化した国保と労災の連携システムを構築し、適切な保険適用がスムーズに行われる体制づくりが必要です。例えば、建設業向けの特別窓口を設置するなど、業界特性に合わせたサポート体制の強化が考えられます。

3. 移動健診車の活用推進

建設現場に健診車を派遣する「出張健診」の仕組みを拡充することで、受診率の向上を図ることができます。すでに一部の自治体では実施されていますが、国保制度として積極的に推進することで、建設作業員の健康管理を強化できるでしょう。

4. 業界団体と連携した健康増進プログラム

建設業界団体と国保が連携し、作業員の健康増進プログラムを共同開発・実施することも効果的です。重労働に対応した運動指導や、腰痛予防などの専門的なケアプログラムは、長期的に見れば医療費削減にもつながります。

## まとめ

土建現場の実態を踏まえた国保制度の改善は、単に建設業界だけの問題ではなく、日本の社会保障制度全体の課題でもあります。収入の不安定さや業務の特殊性に対応した柔軟な制度設計が、建設業で働く方々の健康と生活を守り、ひいては国保財政の健全化にもつながると考えられます。

建設業は日本のインフラを支える重要な産業です。その担い手が安心して働ける環境づくりの一環として、国保制度の見直しと改善が求められています。現場の声に耳を傾け、実態に即した制度改革を進めることが、持続可能な社会保障制度への第一歩となるでしょう。

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中村紳一

著者紹介　社会保険労務士　一人親方労災保険コンサルタント　埼玉労災一人親方部会　理事長　一般社団法人埼玉労災事業主協会　代表理事　1962年生まれ。立命館大学産業社会学部卒。一部上場メーカー勤務を経て２０代で独立。以来社労士歴３０年、労災保険特別加入団体運用歴１０年。マスメディアのコメント、インタビュー掲載歴多数。本人はいたって控えめで目立つことは嫌い。妻、ネコ３匹と暮らす。

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